到着が23時過ぎにズレこんだ、ニューデリーの空港。照明が足りていない到着ロビーへ、降りていくエスカレーターで気がついた。19歳で、初めての海外旅行が、ノープラン、真夏のインド。この組み合わせって、最悪の部類に入るということに。
1週間、ニューデリー市内のお寺にタダで泊めていただいた後、この猛烈な暑さから逃れられる場所が、インドに唯一あるということで、チベットへと行くことになる。
標高2500~3000mあたりに町があり、気をつけないと高山病になるらしい。紫外線の強さが、撮影した写真に自然と現れる。チベットとしては、中国側のラサが有名だが、このレーにもチベット民族の生活があるのだと。今となっては記憶がかなり薄れているが、ラマの研究者に会い、本来はラサからラダックまではひとつながりであり、その間に国境(インドと中国の国境)は存在しないという話を聞いた。
レーの市内で、多くの寺院は見学ができる。ヨーロッパからの観光客が9割方とみえ、特にドイツ人の団体客が多い。僧侶は老師から8歳くらいの子供まで、幅が広い。子供を寺院で受け入れてもらえることは、親の信心にとっても有り難いことらしい。
寺院には曼荼羅が多く飾られている。その中でも方形マンダラは、数が少ない。方形でないものはカオスに感じ、ダイナミックな力を感じる。一方で、方形マンダラには、より宇宙的な秩序を感じる。
周囲を6000~8000m級の山々に囲まれている。桃源郷とはこの場所かと思わされる。小説『シャングリラ』に出てくる理想郷、シャングリラは、ヒマラヤ山脈を西に進んだ場所らしいので、あながちハズしていないことになる。
乾いている。岩石砂漠と空が延々と続く。湧水のある箇所であろう、限られたところに緑がある。オアシスと呼べる場所にしか人は住めないのか。バスで隣町を訪れる際、それまで岩石しか見えなかった車窓に、木々の潤った色を見つける時、強い感動が身体の内に沸き起こる。
渇きと潤い。風景にとって実に重要な断面線なのだと思う。